

近年、子どものムシ歯が減少しているのにたいして、大人のムシ歯は減っていないという現象がおきています。大人のムシ歯で多いのは、一度治療した歯のまわりやハグキが下がった歯の根元にできるムシ歯です。

これまでは、ムシ歯治療といえば、「早く見つけて、削ってうめる」という考え方に基づくものでした。一度削ってしまった歯は、元どおりの歯にはなりません。しかし、近年の研究では、ごく初期段階の穴があく一歩手前のムシ歯であれば、一般的な病気のように、元の健康な状態に戻る場合もあるということがわかってきました。
ムシ歯はできるだけ「初期ムシ歯」の段階で発見し、健康な歯に戻す、それができなければ最小の治療をおこなって、それ以上の進行をくい止める。「削って埋める」という治療をせずに、しっかりと「予防」をすることで健康な歯を守り続ける。こうした考え方が、近年のムシ歯研究から生まれてきているのです。

脱灰と再石灰化
食事をすると、その直後からムシ歯菌が糖分を食べて酸を出し、歯にこびりついてプラーク(歯垢)となり、プラークが酸性となっていく。このとき、歯の表面のカルシムが溶け出していく反応を「脱灰」という。
しばらくすると唾液の働きによって酸が中和され、カルシウムが歯の表面に再びもどってくる。これを「再石灰化」という。食事のたびに「脱灰」と「再石灰化」がくりかえされていくが、様々な要因によって、脱灰>再石灰化の状態が続くことがある。これが「初期ムシ歯」(穴があく一歩手前)とよばれる状態。この段階で早期発見をし、唾液中にフッ素を取り入れ、脱灰を抑制して再石灰化すれば、「削ってうめる」という治療をせずに健康な歯に戻すことも可能になる。

治療方法の研究に重きがおかれてきたこれまでのムシ歯研究は、ムシ歯の原因や成り立ちの研究へと変わりつつあります。この新しいムシ歯研究が「カリオロジー」です。
「カリオロジー」の考え方では、ムシ歯を予防して健康な歯を維持するには、毎日のセルフケアで、ムシ歯になりにくい環境を整えることが重要。そのうえで、定期的に歯医者さんや歯科衛生士さんによるプロフェッショナルケアを受ければ、生涯健康な歯を維持することが可能となります。
近年の研究により、ムシ歯のかかりやすさは、年齢や歯の質、生活習慣など、さまざまな要因によって一人ひとりちがっていることが明らかになってきました。人それぞれにムシ歯の原因やリスクはちがう、ということに注目し、一人ひとりが自分にあったムシ歯対策を考える時代がきているというわけです。
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